日本テレビ設立は、アメリカの日本における反共スキーム構築の1つの側面であったということを膨大な公開一次情報を元に論証した書。
題名からして陰謀論と見られてしまいそうだが、正力松太郎を中心とする日米の様々な主体の複雑な相互関係が綿密に描写されていて、著者の研究の成果が窺える。
今でこそ日本テレビ放送網は映像放映のみを扱う組織に過ぎないが、当時はテレビのみならず軍事関係や通信事業をも含めた複合的メディアの一翼を担う第一歩であったということには驚きを禁じえない。また、米側の「反共スキーム構築」という大目的と、日本側の「経済復興のためのインフラ整備」という大目的は共に一貫していたものの、両国は必ずしも一枚岩だったわけではなく、それぞれの国内で多様な主体がしのぎを削っていた(例えば日本国内でのNHK,NTT,NTVとか)という事実を忘れてはならない。
筆者は、テレビメディアが日本における親米感情育成に多大なる貢献をしたことを強調し、冷戦の遺産ともいえる反共産スキームの一部分である日本のテレビメディアについて、今こそ過去を振り返り再検討を行なうべきであると結論づけている。その一環として上梓された本書は、日本のメディアの源泉を知る1つの手がかりとなるのではないだろうか。
大半が人的関係を時系列的に整理記述したもので、冒険活劇やスパイ小説のようなエキサイティングな側面はない。だが、筆者があとがきで引用している米国立公文書館の銘に拠れば、「民主主義の代価は、永遠に監視を続けること」なのである。
- 感想投稿日 : 2008年3月6日
- 本棚登録日 : 2008年3月6日
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