現代住宅研究 (10+1series)

制作 : メディア・デザイン研究所 
  • INAXo (2004年2月1日発売)
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感想 : 10

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   小規模な個人住宅はとりわけ戦後日本の建築家にとって重要な活動領域だった。ヨーロッパの建築家にとって住宅を設計する機会は稀であり、アメリカの建築家が取り組む個人住宅はおおむね裕福な家庭のための豪邸である。しかし日本の建築家は非常に熱心に小住宅に取り組み、驚くべき多様性を成果として積み上げてきている。    日本の戦後の住宅はさして広くもない敷地にたいていは核家族的な家族が生活する場として作られた。かなり似通った条件が与えられるなかで、建築家はそこに豊かな可能性を見出してきた。500ページを超える分厚い本書はそこにあらわれた多様性をアーカイブとして定着する試みである。日本の戦後住宅が造られていった文脈の内側から、しかし特定の建築家の個人的な意図にとどまらぬ広がりを持つ水準をそこに見出すことを通して、住宅をフィールドとして日本の建築家が展開した試みが叙述されている。    建築批評にはそれなりの基本的フォーマットと解釈のフレームがあるわけだが、本書はそうしたものに頼ることを丁寧に回避している。そうしたものは日本の現代住宅における内在的な指標とは必ずしも言えないし、そうした定石が取りこぼすところに日本の住宅建築の特質があると著者らは考えたに違いない。うずたかく堆積した実例の数々から、その特質をとらえうる言葉を発見し、そうすることで不活性な堆積を現在の建築家が活用できる資料とすること、それが本書の野心的なもくろみである。したがってアーカイブを切り分ける切り口はいくらか見慣れないものとなる。「斜面」「アウトドア」「へこみ」「隙間」、はては「住宅ならざるもの」まで、各章のタイトルとなった切断面は独特である。これで日本の現代住宅を網羅したと言えるのか疑問に思う向きもあるかもしれない。しかしたしかに定型的な分析によってそれらを整理分類することは可能だろうが、そうして腑分けされたアーカイブは解剖学的な網羅性を得るに過ぎない。それに対してここでなされていることは、この豊かな蓄積を延長し展開するための生産的解釈の試みである。そのアーカイブを活性化し、次なる試みへと差し向ける問題発見の場として、本書は現代住宅を再発見しようとしている。(日埜直彦)


内容紹介
塚本由晴、西沢大良がそれぞれ独自のテーマを設定し、設計詳細図から多くの住宅を読みとく。住宅図鑑さながらの豊富な図面とデータを掲載。

目次
プロローグ 塚本由晴
prologue

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ハイブリッド 西沢大良
hybrid
配置 塚本由晴
arrangement
斜面 塚本由晴
slope
小さな建物 西沢大良
small architecture
増改築 西沢大良
enlargement and rebuilding
アウトドア 塚本由晴
outdoor
〈エスプリ・ヌーヴォー型〉 塚本由晴
pavilion de l'Esprit Nouveau
室内風景1 西沢大良
indoor landscape 1
室内風景2 西沢大良
indoor landscape 2
室内風景3 西沢大良
indoor landscape 3
部屋と通路 塚本由晴
rooms and passage
へこみ 塚本由晴
hollow
豪邸 塚本由晴
mansions
外装 塚本由晴
exteriors
寸法・距離 西沢大良
measurement / interval
窓 塚本由晴
window
建具 塚本由晴
fittings
一階 西沢大良
ground floor
二階建て 塚本由晴
two-storied house
殻と中身 塚本由晴
shell and filling
装飾 西沢大良
ornament
~100% 塚本由晴
...100%
太陽 塚本由晴
the sun
図形 塚本由晴
figure
マイホーム 西沢大良
my home
コートハウス 塚本由晴
courthouse
住宅ならざるもの 西沢大良
non-house
庇・軒 塚本由晴
window roof, eaves
収納 塚本由晴
storage
隙間 塚本由晴
niche
軽薄短小 西沢大良
light, thin, short, small
奥 塚本由晴
OKU "depth"

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小屋|コンパクト|中高層|四角い建物|四角い部屋|部屋の内の部屋|リビング|畳|屋根|顔|一点豪華|シンメトリー|カーブ|商品開発|庭1|庭2|人生

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エピローグ 西沢大良
epilogue

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 建築
感想投稿日 : 2010年2月18日
本棚登録日 : 2010年2月18日

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