最後の読書 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2021年8月30日発売)
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感想 : 7
5

専門学校時代、遂に視力が0.1を切った。極度の近眼だった。
それに老眼が加わったのは40代の半ばを過ぎた頃。

毎年のコンタクトレンズ処方の為に訪れた眼科で、白内障の
検査を勧められた。しかし、忙しさに紛れて放置していたら、
コンタクトレンズを装着しても、眼鏡をかけてもモノが
見えにくくなって来た。

「老眼が進んだんだな」なんて自分に言い聞かせていたが、
実は白内障が悪化していた。遂に両眼の手術をしたのだが、
手術に至るまでの1年間、ほとんど本が読めなかった。

まぁ、術後もそれほど本を読む時間が取れていないのだが…。

本書のテーマである「老いと読書」とは少々違うが、私を含め
「趣味は読書」と言う人たちにとって、年齢と共にいろんな
ところにあらわれて来る「衰え」は結構深刻な問題だと思うの。

実際、「いつか読もう」と思って購入していた昭和年代発行の
文庫や新書なんて、字が小さくて読みにくいのよ。つか、本を
開いただけで文字の小ささにクラクラして、そっと閉じちゃうの。
あぁ…挫折の連続だわ。

文字の問題だけではない。集中力や理解力は確実に低下して
おり、何度も何度もページを遡って「ああ、こういうことから
繋がるのね、この部分は」と読み直す回数が増えて来た。

80歳になる著者が綴った本書は、自身の「老いと読書」に
ついてのエッセイであると同時に、関連書籍のレビューでも
ある。

幸田露伴や鶴見俊介、紀田順一郎たちがどのように「老い」と
付き合って来たか。

私は娘である幸田文さんが記した晩年の露伴の様子に胸が
痛くなったよ。

あれも読みたい、これも読みたいと購入して積んだままの
本が我が家にはかなりある。いつか、これらの本をすべて
読了する日は来るんだろうか。

そして、私が最後に手に取る本はどんな本なのかな。願わくば
上質のノンフィクションがいいな。でも、こんなことを書いて
いると、読了後に投げつけたくなるようなクソな作品だったり
して。

本書は「老い」を実感している世代は勿論だが、若い世代の
読書家にこそ読んで欲しいわ。

いつか、あなたにも思うように本が読めない時が来ます。
ようこそ「老いと読書」の世界へ。ふふふ~~ん♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月4日
読了日 : 2023年6月4日
本棚登録日 : 2023年6月4日

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