スパイ小説と言えばフレデリック・フォーサイスと、本書の著者である
ジョン・ル・カレなんだよね、私にとっては。しかもふたりとも実際に
スパイだった。あ、フォーサイスは協力者だっけ。
私の中の2大巨匠のひとりでるジョン・ル・カレも既に85歳だそうだ。その
人の回想録だもの。読むでしょ、やっぱり。
時系列になっていないので「自伝」と捉えて読むと読み難さがあるが、
全38章のそれぞれが短編小説を読んでいるような感じだ。
小説の取材の過程であった人々のなかでもPLOのアラファト議長との
邂逅はまるで映画のよう。尚、アラファト議長のヒゲは柔らかく、ベビー
ローションの匂いがしたそうだ。あぁ、触ってみたかったよ、議長のヒゲ。
イギリス最大の裏切り者キム・フィルビーの友人であり、同僚であった
ニコラス・エリオットとの会見の様子もあるし、『寒い国から帰って来た
スパイ』の映画化をめぐっての話、そしてイギリス諜報機関に在籍し
てた頃の話も少々。スパイだったから多くは語れないんだろうね。
最大の注目はル・カレの父親ロニーのことを綴った章だ。常習の詐欺師
にしてDV夫。この為、ル・カレとその兄の生母はふたりが幼いうちに家を
出てしまう。
ル・カレもお兄様も、きっと多大な苦労をしたに違いない。家庭環境を考え
たら相当に重い話なのだが、ユーモアを交えた筆致が読ませるんだよな。
各章がル・カレの人生の断片なのだ。それをパズルのように組み合わせて
いくと、彼の数々の作品が生まれる。
近年は小説から離れてしまっているが、昔々に読んだル・カレの作品を
引っ張り出したくなった。
困ったな。フレデリック・フォーサイスの自伝も買って積んである。きっと
こちらも面白いはずなんだよな。
- 感想投稿日 : 2017年8月24日
- 読了日 : 2017年7月3日
- 本棚登録日 : 2017年8月24日
みんなの感想をみる