天人唐草 (文春文庫 ビジュアル版 60-27)

著者 :
  • 文藝春秋 (1994年3月10日発売)
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本棚登録 : 487
感想 : 47
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「天人唐草」がとてつもなく恐い。主人公は父親に嫌われたくない一心で、おとなしく、清楚で、そして全く主体性のない女性に育つ。その結果…、なんの救いもない。

自分で何も考えられない主人公を冷笑しながら読むのに、どこかで「これ、私の事じゃない?」って感じてしまう。親の言うことを聞きなさい、女の子らしくしなさい…というのは、女性なら一度は聞く言葉じゃないかな。主人公はそれに従っただけじゃないか、何も悪いことしてないよって、胸を裂かれる気持ちになる。

あとすごいのは、少女漫画のお約束をぶち壊すところ。セオリーなら居場所のない主人公を救うために現れる優しい友人や、運命の相手の王子様も、この漫画では皆無。候補は出てくるけれど、主人公が受け身すぎて何も発展しない。ただ没個性で何も出来ない無能な女性として、淡々と破滅へ向かっていくだけ… 本当に恐ろしい。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 少女漫画
感想投稿日 : 2017年8月27日
本棚登録日 : 2017年8月27日

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