叢書 東アジアの近現代史 第4巻 ナショナリズムから見た韓国・北朝鮮近現代史

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  • 講談社 (2018年2月1日発売)
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 筆者の提示する「○○」ナショナリズムの種類が多く、戸惑いもした。原型として近代化ナショナリズム(対自分)と対大国ナショナリズム(対外部)という2つの枠組みを示しつつも、前者は統一・統一回避・産業化・民主化・中堅国、後者は抗日・用大国(日米中etc.)・競日など、南北分断後は南北で異なるものも含め、様々な種類に分岐していく。また、たとえば「産業化」のための「用大国」、というように、両者は排他的でもないだろう。
 どこまでを「ナショナリズム」とするかにもよる。たとえば日韓基本条約とそれへの反対は、木村幹『民主化の韓国政治』では、日韓会談によりナショナリズムと正統性を失った民主主義(政権)対(反対運動の)ナショナリズム、だとしている。他方、本書では両者とも「産業化」ナショナリズムは共有していたとした上で、「用日」対「民主化」ナショナリズムととらえている。
 筆者が述べる90年代以降の韓国の「中堅国」と「統一」両ナショナリズムの一定の背反は、韓国主導の統一に伴う莫大な費用や、北朝鮮問題は現実的には米中主導であること、しかし韓国は「運転席」に座るべきという韓国の報道にしばしば見られる主張を想起すれば納得できる。
 少なくとも、朝鮮半島のナショナリズムと言えば即「抗日」「統一」、という単純な理解ではないことが分かった。本書では日本統治時代の対日協力や日韓基本条約も、「用日」による国力の増加という点でナショナリズムとしている。また現在の韓国は、「抗日」の時期を過ぎて「競日」になってもいる。筆者自身も、本書は、帝国主義対民族独立運動という「二項対立の歴史観」を修整する解釈の一環である、と位置付けている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 朝鮮半島
感想投稿日 : 2018年2月23日
読了日 : 2018年2月23日
本棚登録日 : 2018年2月23日

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