1930年代を定説とは違う視点から描いていて新鮮。曰く、「満蒙は日本の生命線」松岡洋右の目標は、軍事的膨張ではなく、日満提携と外資による満州の経済開発。国際連盟脱退で日本は国際的に孤立したわけではなく、その目的は満州事変を国際連盟の審議対象から外し、欧米との部分的な関係修復を図ることであり、それは一旦成功。ファシズムはデモクラシーから繋がるもので、同時代の欧米やソ連もある程度共通の国家主義を採っていた。英のブロック経済に対し日本は自由貿易路線。日満はブロック経済だったが、それも米国依存。東亜同文学院など、中国や「南洋」理解は進む。
では、なぜ日中戦争は拡大したのか(本書では国民の熱狂を例に挙げている)。昭和研究会はなぜ矢部貞治のような知識人、更には国際協調を擁護する蠟山政道や、中国統一に共感し対独伊提携への疑問を唱える中山優を迎えたのか、それとも元々このような人々をも包含する存在だったのか。自由貿易を掲げ経済的に対米依存だったのになぜ対米開戦に至ったのか。この時代の複雑さを一層感じる。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本
- 感想投稿日 : 2018年7月12日
- 読了日 : 2018年7月12日
- 本棚登録日 : 2018年7月12日
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