日本の歴史問題 改題新版-「帝国」の清算から靖国、慰安婦問題まで (中公新書 2733)

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  • 中央公論新社 (2022年12月20日発売)
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 事実関係を丹念に追うのは既読の旧版(『国家と歴史』)と同じ。再読すると、旧版の感想以外に、歴史問題とは近隣国を中心とする他国との関係だけでなく、靖国の位置付けや補償すべき戦争犠牲者の範囲、日本遺族会の戦後50年談話阻止運動、連立政権の中での社会党や公明党の立場、といった国内問題でもあることに気づく。
 旧版以降の動きでは、民主党政権時、韓国併合100周年の菅談話は出るも、挺対協の反発と韓国憲法裁の慰安婦判決。更に竹島、尖閣問題の発生。
 第二次安倍政権では河野談話が翻弄されるも、最終的には継承方針。しかし対韓では慰安婦財団の解散、韓国大法院の徴用工判決と「深刻化」。対中では地域のパワーや領土・資源にも波及する「重層化」。
 著者の安倍談話分析は興味深い。満洲事変を歴史の転換点とみなす点は中韓には受け入れがたいだろうとしつつ、日本が国際秩序の挑戦者から守る者になった点を強調、また「過去の克服」や「歴史和解」という問題を意識と指摘。
 著者は終章で、歴史問題を政治化させない条件や論点をいくつか挙げる。A級戦犯の分祀や靖国の「宗教宣言」、戦争責任問題についての改めての国民的合意形成、竹島の放棄を含む領土問題での歩み寄り等を挙げるが、容易には思えない。著者が同様に挙げる歴史共同研究も、既に一度行われたがそれで何か前進したようにも自分には見えない。
 その点、著者が冒頭で言及したこれまでの日本政府による歴史問題「管理」は、「解決」よりはるかに現実的ではないか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2023年3月11日
読了日 : 2023年3月11日
本棚登録日 : 2023年3月11日

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