北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕 (文春新書 932)

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年7月19日発売)
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感想 : 9

出版の2013年以前の数年間を中心に、北朝鮮の内部事情及び関係国の動きを書いている。参考文献リストはないが、著者の取材によるものだろう。学術的ではなく読みやすい一方で、妙な主観は入っておらず丁寧な取材を感じさせる。各章に通じるのが、金正日体制時代の独裁と政府各部門の縦割り、金正恩自身及び指導体制の未成熟さ、人心の指導者層からの離反、関係国間又は各国内での足並みの悪さ、である。

同時に筆者は、北朝鮮については知ったかぶりではなく「取材すればするほど分からないことが増える」と率直に述べているが、正直な感想だろうし好感が持てる。本書では張成沢の差し金による李英鎬や柳敬の粛清が記されているが、脱稿後わずか半年での張成沢自身の処刑は到底予想できなかっただろうからだ。

また北朝鮮の役人について、金正日の決裁を待って深夜まで待機する苦労、ミサイル発射の日が祭事で役所に缶詰だと言ったら妻に怒られた、彼らも現在の体制や政策の問題点を知っているが抵抗しても無駄に終わることも理解しており必死に生きているだけ、といった記述を読むと、体制とは別の血の通った個人の人間像が見えてくるようだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 朝鮮半島
感想投稿日 : 2014年3月2日
読了日 : 2014年3月2日
本棚登録日 : 2014年3月2日

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