「一帯一路」時代のASEAN――中国傾斜のなかで分裂・分断に向かうのか

  • 明石書店 (2020年1月31日発売)
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 本書と『教養の東南アジア現代史』は共に2020年前半の出版。ただ、『教養の』では、ASEANの中心性向上を主に述べつつ、挑戦として内部の亀裂(米中関係や南シナ海問題)を挙げている程度だ。しかし本書では、米中関係の変化とともに、東南アジア諸国の「中国傾斜」、分裂・分断の危機、「ASEANの中心性」喪失の危機、を編著者の1人が冒頭から挙げているのだ。書名及び副題のとおり、本書ではより近年の状況に重点を置いているからなのだろうか。
 これらは多国間制度を扱う福田論文で特に論じられているが、中国のシャープ・パワーによるASEANの機能低下を指摘する黒柳論文など、他の複数の論文でも同趣旨が意識されている。この傾向が始まったのが2000年代後半からか2010年代後半からかは論が分かれるが。また平川論文と山田論文では、この危機を認識しつつも、前者では日本も含めた言論中心の多国間外交により、後者では非伝統的安全保障協力により、比較的楽観的なようにも読めた。
 各国別に論じる第2部では、米中のどちらとも決定的に傾斜しないベトナム、またナジブ政権とその後のマハティール政権で度合いや自主性に差はあれど「中国傾斜」を無視できないマレーシアに、特に米中との距離感の難しさを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 東南アジア
感想投稿日 : 2020年7月25日
読了日 : 2020年7月25日
本棚登録日 : 2020年7月25日

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