数学する身体(新潮文庫)

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  • 新潮社 (2018年5月1日発売)
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感想 : 13

筆者は、数学史上の大事件として数や図形自体を研究対象とした古代ギリシア数学の誕生、そして記号を用いた代数的計算を確立した西欧近代数学の誕生をあげる。さらに19世紀以降、計算は高度に複雑化し、数学は論理や概念という非常に抽象的な世界へと入っていく(現代の経済学はここに基礎を置いているのだろう)。そうした流れの中で、抽象的な概念ではなく、心に注目したのがアラン=チューリングと岡潔だったと言う。チューリングは手段としての数を身体から解放し、それ自体が計算をする計算機を作り出した。彼の原動力には、人の心に近いモデルを作り上げ、論理の表皮を一枚一枚外していくことで最後に残った心を理解したいという思いがあった。しかし、心は理解しようとおもって理解できるものではないと筆者は主張し、心になりきろうとした岡潔を評価する。本来、森羅万象に存在する情を引き受ける一人の自立した人間がなぜ存在するのか、という根源的な問いに向き合うのが数学なのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月28日
読了日 : 2022年3月5日
本棚登録日 : 2022年8月28日

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