「人生百年」という不幸(新潮新書)

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  • 新潮社 (2020年1月17日発売)
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感想 : 2
3

以下一部抜粋
















電卓に限らず、従来は自分でやっていたことを、いろんな機械がみんな肩代わりしてくれる。それは全体としては「進歩」なのだろうが、一方で今まで当たり前にやってきた「人間」の側としては、退化もしくは堕落と言えなくもない。いくつかの領域ではそれに気が付いて、昔は普通にやっていたことをわざわざ意識的にやり直す、という反動現象も見受けられる。アメリカのビジネスマンは建物の外では車で移動し、中ではエレベーターを使い、歩いたり走ったり階段を登ったり降りたりはしない。当然のことながら身体を動かさなくなり、肥満や糖尿が出てくる。そうするとスポーツクラブやジムに入って運動不足の解消を試みるのであるが、そこでやっていることはベルトコンベアーの上で歩いたり走ったりということである。紙に文字を書く習慣が失われて久しい。漢字検定なるものが流行ってきたのにはこういう背景があるようだ。以前に比べどうみても(相対的に)不要になった「漢字の読み書き」の能力を「検定」する必然性はないはずである。なのに英語検定を凌ぐ勢いで受験者が増えている。つまり以前は「生活必需」」であった「読み書き」が「趣味道楽」として流行した形である。こうした「趣味道楽」の「漢字検定」を極めた芸能人がテレビのクイズ番組に出て人気を博す。この手の番組で、漢字書取の他に出されるのは中学高校の入試問題などであるが、明らかにそういうのが不要になった年代の漫才師などが勉強して知識を競ったりしている。この
「勉強」は実用とは無縁の「芸」であり、一方で肝腎の中高生は読書をしなくなり教養が急速に失われつつある。どこか間違っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自己啓発
感想投稿日 : 2020年3月22日
読了日 : 2020年3月22日
本棚登録日 : 2020年3月22日

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