WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン) 心が軽くなる「脳」の動かし方

  • NHK出版 (2022年6月28日発売)
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【はじめに】
著者のジル・ボルト・テイラーは、ハーバード大学に所属する前途有望な脳神経科学者であったが、37歳のときに脳出血により左脳の機能を一時的に失った。そのときの身体と思考の分析と、そこからの回復について『奇跡の脳』にまとめられていて、すこぶる興味深い。また、彼女を有名にしたTEDトークの講演でも彼女の経験が自身の口から紹介されている。

【概要】
本書は、『奇跡の脳』のように著者の体験を描いたものではなく、そういった経験から得られた知見をもとに右脳・左脳を意識した考え方をするべきだという本である。脳を右脳・左脳と大脳皮質と脳幹部分の4つに分けて、それぞれを考える左脳を<キャラ1>、感じる左脳を<キャラ2>、感じる右脳を<キャラ3>、考える右脳を<キャラ4>として、それぞれの特性を解説し、人はこの4つのキャラからなっているのであり、脳全体としてうまく付き合っていくことでよりよい人生を送ることができるというものだ。実際に著者はそれぞれに異なる名前(人格)を付与していて、実際にそれがうまく働いているようである。
著者は一度、左脳の機能を失うことで右脳だけの知覚を体験することになったが、それは得難い心が落ち着くとい自覚であったという。そこからの回復の過程で、左脳と右脳との違いを明確に意識をすることになったという。
脳内の4つキャラがどのような生理学的機構で動作するのかの実証的な分析はあまり行われていない。分離脳患者の実験でも右脳と左脳とは別の認識をそうとは意識せずに行うことは事実としても知られている。ただ、著者が言うように明確にそういった<キャラ>が存在するのかはわからない。ただ、少なくとも著者にはそのような解釈を行うことが最も妥当であるし、実行上もそれを受け容れて意識することでよりよく人生を過ごすことができると信じているのである。

【まとめ】
『奇跡の脳』は本当に素晴らしい本で、読まれるべき本であった。また、著者の回復に要した努力や体験は賞賛に値するものだ。おそらくはこの本を読む前に『奇跡の脳』を読むべきだろう。
著者が回復の過程で感じた体験をもとに書かれた本書の内容は実感の伴った嘘偽りのないものなのだろう。本書で書かれている右脳・左脳の区別の話が科学的な実証に耐えうるものかどうかはわからない。しかし、言語中枢を含む左脳とそうでない右脳の関係についての探究は、俗な興味事とは別物として進められるべきものだと思う。

相応に分量のある本だが、具体的なキャラの話などはあまりできのよくない自己啓発本的なところもあって個人的にはかなり飛ばし読みをしてしまった。

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『奇跡の脳』 (ジル・ボルト・テイラー)
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105059319

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 科学
感想投稿日 : 2023年1月8日
読了日 : 2023年1月3日
本棚登録日 : 2023年1月3日

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