著者の『ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む』は、まるでミシェル・フーコーへのラブレターのような印象があって、著者の熱さが伝わってくるものであった。本書は、過去の著者の論文を一般書向けに若干手を入れて編集をしたもので、より研究者としての我が前に出てきている趣をもったものになっていると感じた。
著者が言うように、かつて一世を風靡したフランス現代思想の中でドゥルーズやデリダがすっかりその現代性を失っていくのに対して、フーコーはその現代的意義を失っていないと言ってもおそらく間違いではないだろう。本書内で言及されているが、コロナ禍における社会の行動規制に関わる動きについては、生の管理を通した生権力-生政治の構造分析の視点はおそらくいまだ有効だ。
取り上げられたテーマは、知と権力、生政治、生権力、正常/異常、ノルム、権力の法モデル、規律権力、セキュリティ、戦争の言説、自由主義・新自由主義、法-規律-統治などが取り上げられる。著者が愛してやまない『監獄の誕生』やそれに続く『知への意志』、さらにコレージュ・ド・フランスのフーコーの講義録などを元に考察を進める。
内容はかなり専門的でどうにか付いていけるかどうかで、学問的価値は判断できるものではない。それでも、社会学的観点でフーコーは今でも有効に使うことができるツールをわれわれに提供し続けていることがわかった。
あとがきの著者の研究歴や、各章の元になった論文の初出時の経緯が書かれていて、著者の重田さんにとっては、ある意味での総決算ともいうべき本ではないだろうか。こういう本を一般書として出版することができるのはおよそ幸せなことであると思う。
一般の人に薦める本ではないが、フーコーについて、『監獄の誕生』、『狂気の歴史』、『言葉と物』は読んでいて、フーコーってすごいなと思っている人は手を出してもいいのではないだろうか。
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『ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む』 (重田園江)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4480066276
『監獄の誕生』(ミシェル・フーコー)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105067036
- 感想投稿日 : 2021年4月11日
- 読了日 : 2021年4月7日
- 本棚登録日 : 2021年4月7日
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