月下の一群 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (1996年2月9日発売)
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感想 : 25
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堀口大學によるフランス詩の訳詞集。本書は1952年(昭和27年)発行の白水社版を底本にした、1996年(平成8年)発行の講談社文芸文庫版。ルビが振られ、一段書きなのでとても読みやすい。
普段は、同作の新潮文庫版(1955年(昭和30年)発行)をよく読むのだけれど、訳が違う部分が多く面白い。
たとえば、ルミ・ド・グウルモン作の「時計」の結びは、この講談社文芸文庫版では

“針と歯車とは、いつまでも、/恋と思ひの時刻を、/示す仕掛になつてゐる。”

だが、
新潮文庫版では

“針と歯車は、いつまでも、/戀と思ひの時刻を、/現はす仕組。”

となっており、講談社文芸文庫版の方がリズムが良い。
また、ギィヨオム・アポリネエル作「ミラボオ橋」のリフレインを見てみると、講談社文芸文庫は

“日が暮れて鐘が鳴る/月日は流れわたしは残る”

であり、
新潮文庫版では

“日も暮れよ 鐘も鳴れ/月日は流れ わたしは殘る”

と、今度は新潮文庫版の方が情感深く思われる。
他にも、アンドレ・スピイルの「鴉」に登場するカラスの一人称が、“私”がいいか、“おれ”がいいかは好みが別れる部分だろう。各版にそれぞれ良さがある。
朗唱したくなるような、洗練されきった美しい訳詞集。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 詩集
感想投稿日 : 2017年9月23日
読了日 : 2017年9月23日
本棚登録日 : 2017年9月23日

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