小説 伊尹伝 天空の舟 下 (文春文庫 み 19-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (1993年9月10日発売)
3.81
  • (47)
  • (49)
  • (69)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 532
感想 : 22
5

古代中国の革命を描く中で、夏王朝の滅亡を桀王ひとりの暴虐に帰すのではなく、体制の限界と見ているのが合理的で、湯王を単なる聖王とも、桀王を単なる悪王ともしていない点に読み応えがある(宮城谷版『三国志』での後漢の衰亡もそのように描かれていたように思う)。
しかし合理一辺倒ではなく、あくまで古代は古代であり、呪術が生きている遠い時代としても書くところに、物語の奥深さと伸びやかさがあった。

主人公・伊尹は、史書において「阿衡」(「はかりのごとき人」)と称賛され、政治における絶妙な平衡感覚をもったひととされるけれど、この小説そのものも虚と実のバランス感覚が卓絶した作品であるのだろうと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年3月1日
読了日 : 2018年3月1日
本棚登録日 : 2018年2月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする