「ひき裂かれた自己」「好き?好き?大好き?」などの著書で有名な精神科医R.D.レイン30歳までの半生記。惜しくも氏はこの著書以降、30歳以降の自伝に執りかかった頃に61歳の若さで、保養先のテニスコートで亡くなったという。まるで小説のように先が気になるような不思議な伝記で、この先の氏の歴史を読むことが出来ないのが非常に残念。
当時も現在でも、レインが精神医学界の中では異端であったという事がよくわかる。彼は「医者と患者」という関係性よりも、「わたしとあなた」としていつも人と向かいあった。医学(主に薬の処方や電気ショック、脳手術による)では治療・寛解が可能な「病気」でも、彼は積極的に治そうとはしない。その人を「病気」であることを含めてその人であると理解し、ただ隣に居続けたのだった。
しかし彼は心の「病気」とは、狂気とは何かと問い続ける。
家族や社会に阻害され、または大きな事故や戦争などで心が壊れるという事。それは「病気」ではなくて、正常な反応ではないのか。
正常な反応を「病気」として治療するという事はどういうことなのか。
正常と狂気の間に線を引き、隔離してしまうのは一体誰か。
そもそも自分は全く正常だと誰が言い切れるのか。
自身と社会に問い続けたレイン。貴重な半生記である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
自伝
- 感想投稿日 : 2013年11月23日
- 読了日 : 2013年11月23日
- 本棚登録日 : 2013年8月21日
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