トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか

  • 山と渓谷社 (2010年7月23日発売)
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本棚登録 : 269
感想 : 57
4

「トムラウシ遭難の本」というよりは「低体温症遭難についてトムラウシを例に語る本」。まぁ、いまやトムラウシと低体温症遭難は対といってもいい状況なので、不適切とも言えないのかも知れない。
登山も知ってる医療専門家が執筆する部分が全体の半分くらいを占めているのが特徴。どういうことが原因で低体温症になりそれが進行したのか、そのときどういう症状が出るのか、それを防ぐにはどうしたらよかったのか、それが詳しく書かれている。筋肉崩壊に関わる数値についての解説は興味深く。「山で無性に肉が食いたくなるときがあるのはそういうことか…」と妙に納得したりもした。
2章の山岳ガイドのインタビューも興味深かった。事故当時38歳ということもあり、「あの状況とあの立場と歳ではな…」と同情してしまう部分もあった。
内容的には✩5でも足りないくらいだが、「じゃあ、なんでこの本とここに書かれている内容が登山者に普及していないのか?」と考えてしまうと、やはり何かが足りないんだろう、といわざるを得ない。山岳保険屋あたりに本を大量購入させて高山の山小屋に送りつけ、談話室の一番目立つところに置かせるくらいのことはやるべきではないか?遭難を一回でも防げれば、その経費は十分ペイする。「営業が足りん」という意味合いを含め、✩4と評価したい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年5月8日
読了日 : 2013年5月8日
本棚登録日 : 2013年5月7日

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