HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)

  • 東京創元社 (2013年6月29日発売)
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やっと読み終わった…
1942年の5月、ドイツ帝国占領下のチェコ・プラハで起きたラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件ー「類人猿(エンスラポイド)作戦」と呼ばれた作戦を担った亡命チェコ政府の暗殺部隊の戦いに焦点を当てた作品。主人公はヨゼフ・ガブチークとヤン・クビシュの二人の兵士、そして敵役は「金髪の野獣」と恐れられるラインハルト・ハイドリヒ親衛隊大将。

本人は本書の中で「小説」と表現しているけれど、どう分類するかすごく難しい。ルポルタージュの要素もあり、とはいえ資料のない部分は創作に頼らざるを得ないので小説の割合も大きい。更に、著者本人の思考が主張しまくってくる。イメージとしては、承認欲求の強い歴史小説家が案内人を務める類人猿作戦のドキュメンタリー番組かな…著者本人が案内人としてコメントしつつ、著者本人の過去にまつわる再現VTRもあり、類人猿作戦の再現VTRもあり。

この本を楽しめるかどうかは、この様式を楽しめるかどうかにかかっていると思う。正直私には苦行だった…とにかく筆者が女々しくてウザい。これは書かなくてもいいことだけど〜と言いながら結局だらだら説明していたり、他者の小説作品をあげつらって史実と違うと批判したり、時折「メンヘラの散文か!?」と思うような瞬間もあったり…一事が万事そんな調子なのだ。小説パートについては面白く読めるんだけど。。。筆者のパートナーの姉の結婚式に呼ばれんかった、って何?日記間違って書いちゃった?とか。史実に対して誠実でありたいというような苦悩のコメントから見るに、誠実な人なんだろうけど、その誠実さの押し売りがまた面倒なのである。

他の方のレビューで、HHhHという作品のメイキングというような表現があって、なるほどと思った。でもメイキングって、本編を一度通しで見たからこそ楽しめるものであって、いきなりメイキング見せられて副音声で監督の声とか流れてきたって散漫になって集中できないよね…

私は最後まで作者の登場が煩わしいと感じていたけど、人によっては楽しめるのだろうし、テーマに沿った小説パートは確かに面白かった。

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ノーベル賞受賞作家マリオ・バルガス・リョサを驚嘆せしめたゴンクール賞最優秀新人賞受賞作。金髪の野獣と呼ばれたナチのユダヤ人大量虐殺の責任者ハイドリヒと彼の暗殺者である二人の青年をノンフィクション的手法で描き読者を慄然させる傑作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(海外作家・一般)
感想投稿日 : 2018年2月20日
読了日 : 2018年2月20日
本棚登録日 : 2015年10月13日

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