ハムレット (白水Uブックス (23))

  • 白水社 (1983年10月1日発売)
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感想 : 37

 シェイクスピア劇の傑作として第一に挙げられる『ハムレット』。シェイクスピアの影響は日本映画界の巨匠・黒澤明にまでも及んでいる。シェイクスピアのような古典中の古典となると、読むことに敬遠する方も多いのではないだろうか。そうした偏見は先に挙げた黒澤明映画を観るのでもいいから、様々な媒体を通してシェイクスピア作品を知って欲しい。けして難解だから知識層に読まれているわけではないことは簡単に分かるだろう。
 『ハムレット』は主人公ハムレットの苦悩を巡る悲劇である。その苦悩の内容は深遠で、ときに自意識を感じることもあるが、その抱えた疑問は私達にも必ず存在するものであることはシェイクスピアの語りを通して分かる。シェイクスピアは台詞回しとシナリオ面での構成によって物語のプロットが既存のもの、つまりデンマークの故事より引き出されたものであるにも関わらず、素晴らしい語りを実現した。
 登場人物の写実性も見事なもので、けして絵空事のようにステレオタイプのキャラクターをなぞったものではない。実際にこのような人物も存在する心理面での描写の説得力もシェイクスピアの見事な点であろう。
 是非「歴史的名作」の先入観を捨てて、『ハムレット』を手に取って欲しい。いつの時代にも言える一貫した作品像がシェイクスピアを通して分かってくる。「古典」とは「神話」であり、我々共通の精神性を現代において実体化させたものなのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年3月3日
読了日 : 2011年3月2日
本棚登録日 : 2011年3月2日

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