ミュージカル「ウィキッド」劇団四季版

アーティスト : 劇団四季 
  • Universal Music
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感想 : 20
5

「オズの魔法使い」の悪い魔女ははたして本当に
悪い魔女だったのか?
どうして悪い魔女になってしまったのか?

人も動物も同じ言葉を話し、共に暮らしていた自由の国──オズ。
平和なこの国にいつしか異変が起きていました。
動物たちが、次々と言葉を話せなくなっているのです。
しかし大多数の国民は、その事態に気付いていません……。

全寮制のシズ大学に入学してきたエルファバ。
特異な緑色の肌のため家族に疎まれ、周囲の学生たちとも
馴染めずにいた彼女は、偶然と誤解からグリンダと
同じ部屋に暮らすことになります。
見事な美貌とブロンドの髪を持つグリンダは、
天性の明るさを備えたクラスの人気者。
一方、思索的で激しい気性のエルファバは、
生まれながらに不思議な魔法の力を持っていました。

性格も外見も異なる二人は、はじめは対立するものの、
次第に互いの内面を理解し合い友情を育んでいきます。

ある日エルファバの元へ、この国の支配者にして強大な
魔力を持つと言われるオズの魔法使いから招待状が届きます。
グリンダを伴い、魔法使いの住むエメラルドシティを訪れた
エルファバは、緑色に輝く大都会の素晴らしさに感激しました。
偏見のない、自由な空気に包まれた憧れの都に、
自分たちの居場所を見つけたことを二人は喜び合うのでした。

しかし、宮殿を訪ねた二人は驚くべき事実に遭遇します。
エルファバがずっと憧れていた「オズの魔法使い」こそが、
自分の権力を強化するために動物たちの言葉を奪っていた、
異変の元凶そのものだったのです。

陰謀の正体に驚き怒ったエルファバは、動物たちを
解放するために闘うことを決意。
「魔法の書」を奪って空高く飛び立ってしまいます。

真相を見抜かれた「魔法使い」は、国民を駆り立て
エルファバを「悪い魔女」に、そしてグリンダを
オズの国を救うシンボルに祭り上げるのでした。

心ならずも正反対の道を歩み始めたエルファバとグリンダ。
怒り狂った群衆たちの魔女狩りがエルファバの身に迫ります。



<ミュージカル版のレビューです。>

テレビ「ビーバップハイヒール」で知ったのですが、
実はこのミュージカル、あの湾岸戦争をヒントに
作られたものだそうです。
「湾岸戦争のフセインは本当に『悪』だったのか?
アメリカ側から見たらフセインは悪だが、
イラク側から見れば、フセインは『善』で
アメリカこそが『悪』ではないのか?」
と作者のグレゴリー・マグワイアは疑問に思ったそうです。
そうして「ウィキッド」はできました。

この番組を見てからミュージカルを観たので、
より楽しめました。
友情・愛・策略…深くて良い物語です。

オズの魔法使いが気球に乗ってオズの国にやって来た頃、
国は混乱していたそうです。
「国をひとつにまとめるには大きな敵が必要だ。」
そうオズの魔法使いは言いました。
そうして動物たちを捕え、彼らから話す力を奪っていったのです。
これはアメリカの政治を批判しています。
彼らは内政の失敗を外交でごまかしているのです。


ドロシーが道中を一緒にするハートのないブリキや
怖がりなライオン、脳のないカカシがなぜぞうなったのかが
違和感なく描かれていました。
「ウィキッド」の全てが「オズの魔法使い」にリンクしていて、
「オズの魔法使い」がアナザーストーリーなんじゃないか
と思うぐらい、すばらしい出来でした。

最初は嫌い合っていたエルファバとグリンダが
互いに心を通わせあい、唯一無二の親友になっていく
過程は感動でした。
また、エルファバの強い意志には心打たれました。

オズの魔法使いとエルファバは実は父子であったり、
エルファバは死んだふりをしただけで実は生きていたり、
エルファバがフィエロをカカシに変えたおかげで彼の命が助かり、
二人は共に生きていくことができたり…
意外な結末には驚きでした。


悲しいことに、誰かの策略で善が悪になることはあります。
嘘があたかも事実のように世間に認知される場合もあるのです。

このミュージカルでは何度も
「物事を違う角度からみる。」
という台詞が出てきました。
これは作者から私たちへ向けてのメッセージなのです。
何でもかんでも鵜のみにせず、多角的に広い視野で
物事を考えることができる人間になりたいと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: DVD
感想投稿日 : 2010年4月14日
読了日 : 2010年4月13日
本棚登録日 : 2010年4月13日

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