ジョージ秋山の名作『銭ゲバ』を883ページ一挙収録という復刻版。分厚いです。重量感がハンパない。お値段も3500+税。それでも、これで『銭ゲバ』が読みたかったんですよね。通して一気読みできるのが利点でしょうか。
買った当時は高校生でした。何か通り過ぎることのできないものをこの作品に感じていたのだと思います。久々に読んでみたのでレビューします。
重たいなぁ。巻末特集の遠藤ミチロウの解説に「ナタ」という表現が出てきますが、言い得て妙だと思います。正しく、現代社会に生きる我々の実存的な姿を抉り出すような「ナタ」そのものです、蒲郡風太郎は。
キャラクターとしては私、すごく好きです。極端なくらい人間臭い。地獄に苦しむ悪人ということで言えば、蒲郡風太郎の他に露骨で分かり易いものを知りません。
ただ、「資本主義が生み出したバケモノ」というのは、半分そうかもしれませんが、半分は当たらないんじゃないかと思います。
存在そのものが見捨てられてしまった孤独、善き友と出会えずに世界中を敵に回さざるを得なかった不幸。この二つが蒲郡風太郎の苦悩の本体です。「銭ゲバ」と言っても、そうした孤独と不幸がたまたま「銭」というハケ口でもって現れた姿に過ぎない。銭故に悪党になったのではなく、悪党として振る舞うためにたまたま銭を武器にせざるを得なかった。最初に風太郎が手を掛けたのは彼に優しくしてくれた兄ちゃんですが、本当は殺したくなかった。「銭故に殺した」と思い込むこむことで自己正当化し続けるあり方そのものが、その後ピストル自殺に至るまで彼の人生を狂わせてしまった。私はこのように解釈します。
それにしても、ラストの筆で殴り書いたような文句は何度読んでも胸に刺さります。
そうだ
てめぇたちゃ
みんな
銭ゲバと同じだ
もっと
くさってるかもしれねぇな
それを証拠にゃ
いけしゃあしゃあと
生きてられるじゃねぇか
- 感想投稿日 : 2015年12月23日
- 読了日 : 2015年12月23日
- 本棚登録日 : 2014年9月26日
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