詩のような美しい文体で物語を紡ぐこの作家、大好きです。私はEnglish Patientのほうが余程素敵だと感じました。描かれる世界のロケーション、規模、時代背景、そして登場人物の数と類というものが、EPでは完璧のように思えます。(私的な好みの話ですが)それでも、Anil'sも十分に美しい本です。スリランカでの凄惨な内戦時代の話です。考古学者の登場人物も出てくるので、歴史的な背景の見える逸話も盛り込まれている。インドの下に位置する小国について知るには適した一冊でしょう。
星三つの点は、最後の100ページを読み進めるのに時間が掛かったから。なんとなく先が読めてしまって冷めてしまったのが、原因。友人の不治の病についての告白、兄弟の不公正な死、危険な立場にありながらも人としての正道を選び真実を語ろうとする主人公、など。ちょっとキッチュな感じがしないでもなかった、話です。
それでも著者の語る世界の美しさには、相変わらず息を飲み涙を垂らします。なんというのかしら。彼の声には、沈黙や孤独の美しさがある。でもそれは、寂しくのないもの。
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カテゴリ:
洋書fiction
- 感想投稿日 : 2012年4月28日
- 本棚登録日 : 2012年4月28日
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