[執念の証明]麻薬中毒患者を治す薬で一旗上げた著者の父は、長春(注:満州国時代の新京)で日本国の敗戦を迎える。中国国内における国共内戦の激化に伴う長春の封鎖がその後始まり、電気・ガス・水・食料の配給が停止。命を守るために長春からの脱出を図る家族であったが、そこで著者を待ち受けていたのは、中国現代史が忘れ去ろうとしている「チャーズ」の地獄であった......。渾身という表現が生易しく聞こえるほどのノンフィクションです。著者は、中国社会科学院社会科学研究所客員研究員などを務められた遠藤誉。
十数万単位の餓死者(正確な人数は現在も不明)を出したにもかかわらず、その事実が今日においても広く知られていないということにまず衝撃を覚えました。著者やその家族が直面した地獄とも言える現実の描写には圧倒されるばかりですし、遠藤氏がそれを今生のうちに書き残そうとする意志にも「怨念」にも似た強い思いをひしひしと感じました。また、遠藤氏の逃避行とその後の日本引き上げ前の生活から、戦後間もない頃の中国の歴史が実体感を伴って知ることができるのも本書の魅力の一つ。
〜自分を生み育んだ国への愛と怨念という、アンビバレントな葛藤の中で闘い続けた私は、ふたたび「チャーズ」の事実をここに残したいと思う。中国で公になる日を待たずに、私はこの世から消えていくことになるのかもしれない。それでも私は墓標を建てる。〜
やっぱりこの人の著書は外せない☆5つ
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- 感想投稿日 : 2016年12月8日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年12月8日
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