浜口雄幸と永田鉄山 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社 (2009年4月10日発売)
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感想 : 4
5

[両翼の相克]盧溝橋事件前の日本政治・外交において、それぞれ異なる思考と体制で運営を試みようとした浜口雄幸と永田鉄山。新たなる時代が到来するという点では認識が一致したものの、その時代が日本にとってどのような性格を持ち、日本はどう対処するべきかという点において、きれいな対比を見せた両名の考えを中心に据えた作品です。著者は、名古屋大学で政治外交史・政治思想史を専門とされている川田稔。


事実関係や本人たちの手記などを踏まえながら、浜口と永田の思考が見事に整理されている点に読み応えを覚えました。方向は異なりますが、政治・経済・社会体制・外交などの分野を横断するグランドデザインを描くことができ、それを実行に移すための影響力を行使し得たという点で2人に相似が見られることもあり、この両名の対比から昭和前期に支配的であった異なる思考の潮流の一端を覗くことができるかと思います。


根本的には「次の戦争は回避できるか」という点に浜口と永田の間で差異があったという指摘は的を射ているものだと思います。「できる」という回答から当時の永田の考えは導き出せないでしょうし、「できない」となれば当時の浜口の考えは理想論として退けられる類のものだったのではないでしょうか。変な用語ですが、「比較近代日本思想史」といった色合いを持った良作品でした。

〜安全保障の問題について、浜口は、国際的国内的諸条件の総合的な判断から、自国の軍事力のみならず、国際連盟の存在と、軍縮や平和維持に関連する多層的多重的な条約網の形成による平和維持システム、戦争抑止システムの構築によって対処すべきだし、対処可能だとの観点に立っていたのである。〜

永田鉄山って思っていたより鍵となる人物なのかも☆5つ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年8月10日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年8月10日

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