[公に捨てた私の顔]皇道派青年将校が中心となり,「昭和維新」を目指して立ち上がった二・二六事件。謀反人として裁かれた彼等の妻たちに焦点を当て,その後長く尾を引いた影響について記した作品です。著者は,本作で鮮烈なデビューを飾った澤地久枝。
優れたノンフィクションして誉れ高い一冊ですが,やはり着眼点が素晴らしい。二・二六事件の中に,妻というフィルターを通して「私」という視点を入れることにより,事件の輪郭がより豊かになっていることがわかります。また,歴史を揺るがし,歴史に揺るがされた人間たちの物語としても一級品と呼べる作品です。
〜愛されるとは,辛いことである。二・二六事件の妻たちが,長い歳月,夫の思い出を捨てきれず,事件の影をひいて生きてきたひとつの理由は,死に直面した男の切々とした愛の呼びかけが心にからみついているためである。短い蜜月と死にのぞんでの愛情の吐露,それは妻たちにとっては見えない呪縛となった。〜
前評判どおりの☆5つ
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年4月12日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年4月12日
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