[我が身と文明とを委ねて]2022年、フランス。その年に執り行われた大統領選は、社会の緊張という追い風を受けた極右政党と、カリスマ性を備える党首に率いられたイスラーム穏健派政党の一騎打ちに。国家のファシズム化を恐れた国民はイスラーム政党に傾き、フランス初のムスリム大統領が誕生するのだが、それとともに大学教授を務めるフランソワの身の回りにも変化が生じるようになり......。シャルリー・エブド事件当日に発売され、フランスを中心として大反響を巻き起こした作品です。著者は、本書の影響もあり、警察の保護下に置かれたとも言われているミシェル・ウエルベック。訳者は、現代フランス文学の翻訳を多数手がけられている大塚桃。
そのあらすじだけで若干引いてしまうぐらいの破壊力があるのですが、読んでみるとイスラームがどうというよりは、フランスないしはヨーロッパの「退潮」、もっと言ってしまえば「疲れ」のようなものがテーマにある作品だと感じました。11月も半ばに入りずいぶんと年も暮れてきましたが、2015年というタイミングで読んでおくべきものは何かと問われれば、私は間違いなくこの一冊を推します。
原著のタイトルが「Soumission」(注:「イスラーム」というアラビア語の単語が持つ意味をフランス語に置き換えたもので、英語にすると「Submission」に相当)であることから「服従」という日本語訳タイトルが付けられているのだと思いますが、下記の一文などと合わせて、なぜ著者がそれをタイトルに持ってきたかを考えながら読むのも興味深いのではないかと思います。まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、とりあえずオススメですのでぜひ読んでみてください。
〜人間の絶対的な幸福が服従にあるということは、それ以前にこれだけの力を持って表明されたことがなかった。それがすべてを反転させる思想なのです。〜
読んだ誰かとすぐに話をしたくなる類の一冊です☆5つ
- 感想投稿日 : 2015年11月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2015年11月18日
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