[一変の戦]主にヨーロッパを中心として甚大な人的・物的損害をもたらし、その後の世界の在り方を一変させることにつながった第一次世界大戦。一つの暗殺事件がどのようにこの歴史的災厄につながっていったのか、そして戦争の過程で国際社会や各国の国内体制がどのように変化していったのかを、最新の研究を基にまとめあげた作品です。著者は、西欧ヨーロッパ、特にドイツを専門とされている木村靖二。
日本の歴史の教科書ではどうしても小さく扱われてしまいがちな第一次世界大戦ですが、それがもたらした今日にまで続く影響の大きさに驚かされます。また、従来の見方とは異なる見解も紹介されており、第一次世界大戦そのもののみならず、それをどのように歴史に位置付けていくかという点を紹介してくれているところも素晴らしかったです。
個人的に読み応えが特にあったのは、列強諸国がどのようにしてドミノ倒し的にこの大戦に関わるようになったのかを解説した箇所。相手国の意図や能力の過小評価といった点はもちろん、列強体制に加わったままでありたいという、俗な言葉を使えば「プライド」とも受け取れる観点に比重が置かれていたことには少なからず考えさせられるところがありました。
〜最終的に参戦を決断させたのは、列強としての地位が危険にさらされているという、伝統的な列強体制特有の論理であった。……列強としての地位が危うくなる事態を前に、戦争に訴えもせずに後退するなら、それは列強として声望や地位を失うことだ、というのが当時の支配的見解であった。〜
日本の関わりも紹介されていますので、日本史に興味がある方にもぜひ☆5つ
- 感想投稿日 : 2016年2月19日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年2月19日
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