日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」 (宝島SUGOI文庫) (宝島SUGOI文庫 A あ 5-2)

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  • 宝島社 (2011年7月7日発売)
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感想 : 4
5

[気脈]昨年に開設60周年を迎えた日本テレビ。その「父」と称された正力松太郎は、常に大衆視点で物事を捉え、日本におけるテレビ事業の立役者とされている。しかし、著者はアメリカの公文書館から一つの機密文書を見つけ出し、正力に「Podam」という暗号名が付けられていたことを知る。そして、そこから見えてきたのは、戦後日本の電波網を舞台にした、アメリカと日本の間で繰り広げられる衝撃的な駆け引きの数々であった......。著者は、本書で多くの反響を巻き起こした有馬哲夫。


1つの企業が、戦後の国際政治という超マクロ的要素と、携わる人間の私益や思惑という超ミクロ敵要素が幾重にも複雑に絡み合った上で生まれたものであることに驚かされずにはいられません。著者自身が述べているように、今日、この成り立ちが良い・悪いという文脈でとても捉えられるものではないことは明らかなんですが、ぜひとも戦後日本に大きな影響力をもったテレビというメディアの生まれ来る背景に、このような暗闘があったことはぜひ知っておいても良いのではないかと思います。


あまり目にしたことのない人物の名前が多く登場するので、慣れるまでは読みづらい面もあるのですが、裏返せばそれだけの「見えざる人々」が日本の復興期に動いていたということが言えるのかも。まだまだ日米間の紐帯が制度化されていない時代だからこそ見られたダイナミックで型破りな動きもそこここで散見され、日本とアメリカがどのように手をつなぐようになったかを考える上でも非常に有益な作品でした。それにしても、「敗戦」という現実から理想を組み立てていくエネルギーには恐れ入った。

〜誰しも日本の主な都市をすべて焼き払い、原爆まで投下した怨敵アメリカに頭を下げて金など借りたくないが、戦争で荒廃してしまってその資金がない以上はしかたがない。アメリカのものに限らず、借款はすべて何らかの形で「ひも付き」なのだから、要はそれが借款をしてまでするほど重要でかつ緊急を要する事業なのかということだ。それに対する正力の答えは、しかり、なのだ。〜

これは骨太の作品だった☆5つ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年9月9日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年9月9日

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