武士道 (岩波文庫 青118-1)

制作 : 矢内原忠雄訳 
  • 岩波書店 (1938年10月15日発売)
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感想 : 319
5

とても綺麗な本でした。新渡戸稲造が日本には宗教がない。どうやって道徳を学ぶのだ。と言われ、外国人向けに英語で書いた本。
綺麗と言うのは文章と、ここに書かれる武士道と言う生き方の事です。
それに、飛び回る様に方々からの知識歴史を引用、比較する事で、鮮やかに描かれています。


心に残った事 メモ

封建制度によって生まれた武士道と言う精神は、仏教から「運命に任すと言う平静なる感覚、不可避に対する静かなる服従、危険災禍に直面してのストイックなる沈着、生を賤しみ死を親しむる心」を寄与される。

剣道の柳生但馬守は、門弟に「これ以上の事は指南の及ぶ所ではなく、
禅の教えに譲らねばならない」と言ったそうだけれど、とても内省的な物である。
モムゼン曰く、ギリシャは礼拝の時目を天に上げるが、ローマは頭を物で覆う。前者は凝視、後者は内省で、本質的には後者に入る。

孔子、孟子の影響も大きい。(本書では元々あった物を、これらの教えで確認したに過ぎないといっている)
ただ、これらを知る事より、知識を学ぶ者の心に同化し、その品性に現れる時にのみ、真に知識となると考えられていて、「論語読みの論語知らず」「学問は臭き菜の様なり、よくよく臭みをとらざれば用い難し。」など、知識は手段として求められた。

・義
義理とは、元来「正義の道理」であった。例えば、親に対する行為に、愛が必要であるが、それの欠けたる場合、義理によって孝を実現する。
勇気は、義の為に行わなければならない。義をみてせざるは勇なきなり。
また、勇とは義しき事をなすことである。

・仁
敵に塩を送るなど、勇が仁に繋がる。義が厳格なる正義であれば、仁は慈愛と柔和と説得性を持つ。
伊達正宗「義に過ぐれば固くなる。仁に過ぐれば弱くなる。」
「最も剛毅なるものは最も柔和なる者であり、愛あるものは勇敢なる者でる。」
また、それらの心を涵養する為、詩歌が奨励された。

・礼
それらの優雅な感情は礼を生む。真の礼は他人の感情に対する思いやりの外に現れたる物である。それらの精神修養として、茶道の芸術がある。

例として、アメリカ人は贈り物の際、品物を称賛して渡す。それは良い物意外を相手に送るのは侮辱と考えるからであるが、日本人は品物を蔑んで渡す。それは、相手の精神を最上の物として、如何なる善い物もあなたには及ばないと言う論理である。

・誠
また、礼を真実とする為、誠も重要視された。それは商業の発達を妨げ、開港場では多くの高潔な武士が、駆け引きを知らず失敗した。貧困を誇り、富を口にするは悪趣味と考えられ、各種貨幣の価値を知らざるは善き教育のしるしとされていた事もある。

・名誉
誠で無い事は弱さであり、不名誉とされた。その為、名誉は至高善とされ、青年達は如何なる精神的、肉体的苦痛にも堪え、名誉の為には命も廉価と考えられた。

・忠
そして、忠義が、これら封建の諸道徳を結んだ。
刀は名誉と忠義の象徴で、名前を付け、床の間に飾られ、礼拝の対象となった。

読んだだけで、背筋が伸びる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年6月23日
読了日 : 2012年6月23日
本棚登録日 : 2012年6月23日

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