少年事件に取り組む―家裁調査官の現場から (岩波新書)
本書は、元家庭裁判所調査官で、本書出版当時は鈴鹿医療科学大学助教授であった藤原正範氏による、「少年司法」の制度と現場での活動について述べられた本である。
本書は2005年12月に執筆されており、これは2001年に施行された改正少年法の見直し時期である2006年3月の直前である。著者は長年、家裁の調査官を務めてきた経験から、少年法の理念であった保護・更生から厳罰化の流れに向かうことを懸念する。いわゆる「非行少年」でない児童・生徒が保護されることも多く、そのような例では再犯もほとんどないこと、また保護処分の一つである「保護観察」が大きな効果を挙げていることを述べている。
筆者としてはあくまでも少年法の目的は「健全な育成」であるとし、厳罰化には反対のようであるが、本書は筆者の意見を極力排して書かれており、少年犯罪に関する各種データとともに、少年法、検察、家庭裁判所、保護処分などについて詳しく書かれている。
初学者にはとても参考になる内容であり、内容も読みやすいので★5つと評価したい。少年犯罪に関する他の書籍の前に一読しておくことをおすすめしたいと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2013年3月19日
- 読了日 : 2013年3月14日
- 本棚登録日 : 2013年3月13日
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