ジャッジメント

著者 :
  • 双葉社 (2016年6月21日発売)
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本棚登録 : 1075
感想 : 170
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読書備忘録706号。
★★★★。

小林由香さんを読むシリーズの最後。デビュー作にたどり着きました。
テーマが衝撃的ですね。この作品以降続く、救われない被害者の苦しみ、微かに見える救いを描き続ける作者の原点と思います。

「復讐法」
20XX年に制定された法律。
凶悪犯罪が増え続ける日本において、これに歯止めを掛ける為に、やられたらやりかえしても良い、ということが合法となった。
犯罪者はこれまでの旧法で裁かれる。いわゆる懲役刑など。それに加えて、被害者遺族が加害者に対して、被害者が受けた内容と同じことを執行できるオプションが付く。被害者遺族は、旧法による裁きか、自らが執行する復讐かを選べる訳です。

作品は、復讐を選んだ被害者遺族の刑罰執行に同席し観察する"応報監察官"鳥谷文乃を主人公に、復讐法執行の5つの短編から構成されます。

【サイレン】
応報執行者は、息子を札付きの未成年達に壮絶なリンチの末殺された父親。
執行される施設の外で息子を許してくれと土下座する加害者の母親。息子がリンチされるきっかけを作ったのは父子喧嘩であり、一切息子のことを構って来なかったことに苦しむ父親・・・。
【ボーダー】
応報執行者は加害者の母。娘を執行しようというのだ。娘は祖母を殺した(応報執行者にとって母親)。最愛の母親を殺された母は、自分の娘に同じ思いをさせて復讐すると。しかし、娘にとって祖母はいかがわしい宗教団体にはまり、自分の大切な家族を壊した悪魔であった・・・。
【アンカー】
通り魔殺人に最愛の家族或いは婚約者を殺された被害者3人が応報執行者3人。3人の気持ちは纏まるのか・・・?
【フェイク】
霊能者の女性に息子をビルの屋上から突き落とされた母親が応報執行者。霊能者はなぜ女性の息子を突き落としたのか?霊能力に裏に秘められたふざけるな的事実・・・。
【ジャッジメント】
妹を、内縁の父親と実の母親に、暴力と育児放棄により餓死させられた少年が応報執行者。執行方法は餓死。骨と皮だけになっていく両親。しかし、少年も消耗していった。少年の抱える後悔は・・・。

巻末を見ると、実は最終話のジャッジメントが初出。
単行本としては時系列。作者は初めからすべての構想を練っていたのでは思わせる。
ジャッジメントが重すぎる。頻繁にニュースになる育児放棄による幼い子供たちの死。この問題の深刻さを見抜き2011年に小説にしていた作者は苦しんでいたと思われます。

小林由香さんはこれにてひと段落ですが、新作が出れば苦しみながら読みたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月28日
読了日 : 2022年12月28日
本棚登録日 : 2022年12月28日

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