ミツハの一族

著者 :
  • 東京創元社 (2015年4月27日発売)
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大正時代。
北海道帝国大学医学部に籍をおく清次郎。彼は一族から烏目、と言われる目を持つ青年。
彼らの一族は信州から北海道にやってきた開拓民。なぜなら、それは水が涸れたから。
彼らの因習では、死人に妄執があれば、鬼となって水辺に立ち、放っておくなら水を涸らし、毒となす。
なので、鬼を見る役目を背負ったむくろ目を持つ「水守」と「烏目役」と呼ばれる者が鬼を常世へと送る。

鬼が水辺に立つと呼び出される清次郎。
最初は義務感から鬼を送るが、水守の少女の境遇を知るにつれて同情し、愛しく想うようになる。
閉ざされた環境から、少しでも自由を、と小学校の教科書を手に入れて教える清次郎。
彼は、最初に少女に約束していた。
「君の苦しみを、いつか必ず取り除く」と。

烏目役が青年で良かった、というのが率直な感想でした。
もしこれが、男女逆であったなら、女性は即決タイプが多いので、水守の目に包帯でも巻いて、
「私と一緒に逃げましょう!」ってなことになりかねないな、と。
そうなったらギャグだ…
烏目役が清次郎だったからこそ、清らかな物語になったなぁ〜、と思う。

静謐で、美しい小説でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 書籍
感想投稿日 : 2015年9月4日
読了日 : 2015年9月4日
本棚登録日 : 2015年9月3日

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