憲法学の病 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2019年7月12日発売)
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私たちの世代も社会科の教員から「憲法9条は唯一無二の平和宣言」という刷り込みを受けてきた。だから、「国際法を踏襲しただけ」という本書の主張は新鮮であり驚きだった。
憲法学者は自らの政治信条に利用するため憲法を道具にしている、という筆者の主張もよく分かる。

政治信条は研究のモチベーションでもあるので研究者から排除することはできないが、ウェーバーが看過したように、研究者には嗜みと含羞をもって自己検閲する義務があると思う。それができない者は教壇を去るべきだ。自らへの戒めも含め、その思いを新たにした。

本書は(憲法学者の書籍ほどではないにせよ)基本的な前提事項の説明が省略されていたり(9条2項の原文が、1章で散々議論されたあと2章で掲示されるなど)、構成が掴みにくかったりする。そのため玄人向けだと思い込んでいたら、あとがきで「一般のために分かりやすい本を」とのリクエストに応じて書いたとあり、これにも驚いた。良書だと思うのでもう少し時間をかけて改稿すれば、長い時間をかけて読み継がれる本になると思う。ぜひそうなってほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2019年11月23日
読了日 : 2019年11月23日
本棚登録日 : 2019年11月23日

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