“何ということもない話
大したことは起こらない
登場人物それぞれにそれなりに傷はある
しかし彼らはただ人生を眺めているだけ。
長い間、そういう小説を書きたかった”
ずっと、ずっと心のアニキであるばななさんの短編集。
グラデーションが美しい表紙にあらわされているように、人生の中の儚い時間の中で、ふとした時に見つけた、何気ないようで、二度と会えない美しい瞬間のような物語。
それでも、日常を紡ぐ中にある、きめ細やかな優しさや、あふれんばかりの愛に満たされる。
既刊「デッドエンドの思い出」のあとがきには
“これを書けたので、小説家になってよかったと思いました”
と書かれている。
今回は
“この本を出せたから、もう悔いはない。
引退しても大丈夫だ”
という。
それぐらい、この本は結晶を集めて、ひとつひとつ並べました、という感じがする。
日常ではない場所で、喪失を感じていたりしたのに、うっかりしちゃったり
変なところで、意外な優しさに包まれたり
それは「小説だから、そんなこと起きるんでしょ?」という感じの、唐突感はなく
この人には起きるべくして、起きたのだと
わかる
それぐらい、この主人公たちは、私の隣にいてもおかしくないぐらい、とても体温を感じる人であり、私であるかもしれない、と思える
出会っても別れても、それでも日常が続いていく。人は生まれて、死んでいく。そうそう、そういうもんだよね、ということが日常の中に、きちんと存在してる。
やっぱり吉本ばななさんは、わたしの心のアニキである。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年7月27日
- 読了日 : 2023年7月27日
- 本棚登録日 : 2023年7月27日
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