忠誠と反逆 (ちくま学芸文庫 マ 13-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (1998年2月1日発売)
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感想 : 16
3

 丸山眞男先生の本は、大学の法学部で、最初のころの政治学関係の講座の必読書。

 当時から政治学関係の本は、対象がひろすぎ、書き方ががむずかしすぎ、苦手意識がある。実は、今読んでも難しい。

 社会人経験を30年、政治家とつきあっても30年、それでもむずかしい政治学の本ってなんだろう。自分のアタマが悪いだけかな。

 この本は、池田信夫さんが、日本の古層、空気の議論をしていたときに推薦されていたので、購入。丸山眞男が文庫で読めるなんて、善い時代だなと思って。

 わかったこととよくわからなかったこと。

(1)丸山先生が日本の歴史意識の古層をなし、執拗な持続低音をひびきつづけた思想要式は、「つぎつぎ」「なりゆく」「いきほひ」だそうだ。(p402)

 つぎつぎは、皇統一系とか、保守系の人がすきなように、次々とつながっていくことへのこだわりでなんとなく理解できる。なりゆきは、なるという自動詞的に生まれてくる、天がつくるのではなく、自らうまれてくるという古事記などの記述は天地創世神話としてはめずらしいということがわかった。でもなにか思想に関係するのか、よくわからない。いきほひについてはよくわからなかった。

 なんだ。大事なこと、全然わかってないな。これを勉強するためによんだのに。

(2)幕末のときに中国由来の攘夷思想を乗り越える点で、朱子学が一種の諸国を共通する自然法概念を受け止める媒介になった。(p249)

 この論点は、おもしろいが、実はこの論文、先生の体調がすぐれなかったのか途中で終わっている。大家になると途中でおわった論文も文庫にのる。

(3)日本の思想史のなかでは、どちらかといえば、松陰の行動的パトスと死をみることきするがごとに態度の方が魅力があります。それに対して、象山に代表されるような、異学や異文化との積極的接触をおそれない知性の勇気ー危機に臨んで心情的にラディカルであるよりも、ものごとを認識するうえでラディカルであろうとする態度は、比較的になじみがうすいのではないかと思います。(p161)

 丸山先生は本業が古事記までさかのぼる日本の政治思想史だったんですね。超国家主義の分析などで有名だとおもったけど、また、一つ賢くなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治学
感想投稿日 : 2012年4月15日
読了日 : 2012年4月15日
本棚登録日 : 2012年4月15日

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