決して腐敗しない死体の少女エリス。
彼女は年齢も性別も関係なく相手を魅了していく。
墓守の青年。
成金貴族の息子。
香油用の花を摘む少女。
そして絵描きの男性。
誰も彼もエリスの魅了からは逃れられない。
その先に例え破滅が待っていたとしても。
奇跡的にその魅了から逃れられたとしても、その先に待つのはまた別の呪いだ。
飢えて飢えてたまらなくなり、そしてエリスを次の「語り手」へ委ねるようになるのだ。
これもまた、人としては破滅なのかもしれない。
そんなエリスに魅了され、そして破滅していく人々の物語。
胸に重くのしかかるのは墓守のお話。
美しいのは少女の話。
そして狂気の話は貴族の彼、そして友情からの落差が哀しいのが絵描きの話。
どれもこれも端的に言ってしまえば悲劇である。
でも、どれもこれもこちらを魅了してならない。
エリスのように、物語自体に魅力がある。
エリスが何者なのかは、最早重要ではない。
彼女に魅了された者たちが作り出す物語がどんな色をしているのか、どんな花を咲かせて散っていくのか、それこそが重要。
きっとこれからも次々と生み出されていくのだろう。
美しくも哀しい、そしてきっと常人には理解できない世界の物語が、死せる彼女を中心として。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説(作者名:や行)
- 感想投稿日 : 2022年10月20日
- 読了日 : 2022年10月20日
- 本棚登録日 : 2022年10月20日
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