蘇我の娘の古事記 (ハルキ文庫 す 6-1 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2019年2月14日発売)
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本棚登録 : 237
感想 : 22
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兄妹として育ち、やがて夫婦になったヤマドリとコダマの純愛がたまらなく愛しかった。
愛しかったゆえに、そんな二人が幸せに暮らしていくことを許してくれなかった時代の流れが、血筋が、憎くも辛い。
本音を言えば、やっぱりこの二人には、たくさんの子供たちに囲まれて、最後まで幸せに生きて欲しかった……
何度も危険な目に遭ったし、ずっとそばにいられた訳ではないから、余計に。
それでも、ヤマドリは最期までコダマのために戦って、これからもコダマが健やかに生きていける世界を守るために戦って、命を捧げた。
最初から最後まで、彼の彼女への想いは変わらなかった。
それが、本当に尊い。
勿論、コダマの想いもそう。
だからこそコダマは後に決意し、父が情熱を注ぎ、兄であり夫であったヤマドリと共に「聞いた」物語を歴史として、そして「古事記(ふることぶみ)」として作り上げていく。
実際の日本書紀にある恵尺の記載、そして古事記の「序」から発展させた壮大な物語は、古事記の「本当の作者」そんなコダマの生涯の物語でした。
当時の飛鳥や近江の空気感も伝わってきて、盲目のコダマのように、実際に読者側もその光景が見える訳ではないのに、目の前にあたかもその光景が広がっているかのような臨場感がありました。
解説にもあったけど、極上の読書体験をさせていただきました。
歴史小説ですが、読みやすい文体で、すらすら読めるのも、個人的にはポイントが高かったです。
分厚さを全く感じさせない作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(作者名:さ行)
感想投稿日 : 2019年3月17日
読了日 : 2019年3月17日
本棚登録日 : 2019年3月17日

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