今年最初の読書のタイトルが『最後の読書』というのは、もちろん狙ったところもある。ただ、それ以上に感じるところもあってさ。編集者、演劇人とのことだけど、齢80になろうとする時期に、読書周辺での年齢からくる苦労など、あれこれというのがね。なんとなく最近年取ってきたなぁという自分の親を観る視点と重なったところがあるんだろうね。
冒頭、鶴見俊輔が脳梗塞となって以降、話すことも書くこともできなくなり、亡くなるまでの3年ちょっとの期間、ただひたすら本を読んでいたという話。幸田露伴の晩年、目が悪くなっていき、読むのに忙しいから、もう書く時間がない、と言っていた話など。読書人の晩年というのは、なんのためというのではなく読むこと自体に喜びを見出していくのかなぁ、なんて思った。
読書好きな人に限らないかもしれない。ただテレビを観たり、庭を眺めるだけでもいいのかもしれない。自分の外にあるものを、ただ受け取り、そこに溶け込んでいってしまうような。歳をとり、最終的にあの世に旅立つというのは、自分自身がこの世に溶け込んでいくということなんじゃないか、なんてことを考えてしまったね。
著者は古典をダイレクトに読めない自分の世代を、ダイレクトに読めていた先行世代と比較して苦笑している感があるけど、その視点に立つなら、俺なんてものはもう知的能力に欠けるなんてものじゃないよなぁ、と苦笑するところもあった。別に悲観や卑下して思うのではなく、まだまだ伸びしろ、あるよね、って。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月3日
- 本棚登録日 : 2023年1月3日
みんなの感想をみる