現役ばりばりの人が評伝を書かれるのは、まだ早いんじゃないかという気もする。毀誉褒貶が定まってないから。でも、ここまで乱高下する人物として考えると、いまさら人の評判なんてどうでもいいじゃん、という気もしてくる。
本書を読んでみようと思ったきっかけは、日経の週末の書評欄だったと思う。スペースXで3回失敗してくじけずに4回目で成功させた一方で、ツイッターの買収ではいつまでもくよくよと悩んでいるなんて話が出てたんじゃなかったっけ。
今、下の終盤で、まさにTwitterを買収してくよくよしているあたり。
Twitterという会社は、もともと心理的安全性に配慮し、働く人が安心して働ける環境づくりを大切にしてきた。
マスクは、それをぶちこわす。
マスクにとっては、安心など敵。たぎるような不安こそが、起爆剤であって、常に本気で全身全霊を打ち込むことを求める。
ワークライフバランスなんてものは、全否定し、テスラ、スペースXでいい関係を気づいてきた能力の高い人でも、そのあたりのかけちがいで離れて行ったという人もいた。
心理的安全性を提唱したエドモンドソの『恐れのない組織』は俺も読んだし、ひとつのセオリーとして職場環境をつくる立場にいる身としては、配慮しなければならないポイントだと思う。
一方で、マスクのようにここまでそれを全否定してかかってくるのをみると、むしろすがすがしいね。
たぶん一生それで過ごすことはできない。
俺がうちのシャインさんたちにマスクが求めるようなことを求めたら、全員やめるか、俺がクビになるかのどちらかだろう。
職種もあるしね。
ただ、心理的安全性というセオリーがあって、それを守るべき規範みたいにとらえていたなかで、まったく違う見方があって、しかもそれがけっこう業績をあげていると聞くというのは、大きな刺激になるな。
あぁ、違う世界ってあるんだ、ちょっとくらいあってもいいかも、とかね。
人に求めようとは思わないけど、自分の中では本気モードが前面に出る場面は、もっとあっていいかな、なんて思ったね。
- 感想投稿日 : 2023年11月26日
- 読了日 : 2023年11月22日
- 本棚登録日 : 2023年11月22日
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