イノベーションのジレンマ 増補改訂版: 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき

  • 翔泳社 (2001年7月1日発売)
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ようやく読みおわった...
この本の骨子は以下のような主張である。

第一に 、破壊的製品のほうがシンプルで低価格 、利益率も低いのが通常であること 。
第二に 、破壊的技術が最初に商品化されるのは 、一般に 、新しい市場や小規模な市場であること 。
第三に 、大手企業にとって最も収益性の高い顧客は 、通常 、破壊的技術を利用した製品を求めず 、また当初は使えないこと 。概して 、破壊的技術は 、最初は市場で最も収益性の低い顧客に受け入れられる 。

大手企業は慢心ゆえに破壊的技術を扱わないのではなく、破壊的技術が受け入れられるような小さな市場は大手企業の成長戦略にも、顧客(あるいは既存のバリューネットワーク)の要望にも沿わないからだ。

大手企業が破壊的技術を作り出す方法二つ、社内で既存のバリューネットワークに属さない組織を作るか、買収するか(結論は見知ったことになる)。

以下、気になった部分の要約

★ディスクドライブメーカーの例

ディスクの直径は14→8→5.25→3.5→2.5→1.8と縮小し、主導権を握るメーカーも移り変わって行く。
では、それぞれのメーカーは慢心していたから主導権を取られたのかというとそうではない。
合理的に判断した結果、破壊的技術よりも既存顧客を大切にするという真っ当な判断をしたことで、成長する市場に乗り遅れている。
技術的に開発できなかったわけではなく、常に破壊的技術による新製品は既存の技術によりまず開発されているようだ。
成長するようにみえる市場でもその成長は確約されたものではないので、既存の市場を大事にするのは当たり前、というのは至極真っ当に聞こえる。

★大企業における破壊的技術の扱われ方
破壊的技術は技術担当者により設計され、マーケティング担当に連携され、顧客に提案される。顧客のニーズに沿ったものではないので、否定的な反応が返ってくる。
事業計画を練る段階でその意向は反映され、大抵は却下される。
却下されなかったとしても、優先順位が低い事項として扱われ、少ないリソースしか割り当てられない。
既存の顧客の問題解決のため、破壊的技術の担当者が駆り出される例は、痛いほどわかる。明確な期限もなく、確固とした影響もわからない課題解決よりも、既存の顧客の問題解決のほうがはるかに重要にみえるだろう。

★バリューネットワークについて
入れ子構造になった生産者と市場のネットワーク内に企業は組み込まれている。
特徴は性能指標に対する顧客の評価のランクづけとともに、その製品やサービスを供給するために必要なコスト構造によって決まる。
(そのため、実績ある企業は持続的イノベーションには明らかに強く、破壊的イノベーションには弱い。新規企業はその反対である)
通常戦略的な判断する際には技術のSカーブの断続的な重なりからSカーブの成長曲線が緩やかになるのを見越して別の技術に投資するべきというのが定石だ(そう)だが、破壊的技術は既存の市場とは別のバリューネットワークで商品開発され、成長を続け、既存の市場を侵食する段階になったらすでに恐るべきスピードで既存企業を駆逐する。
有線放送とOTT企業の関係も、このバリューネットワークの違いにあるか。ビジネスモデルとその関係するステークホルダーの利害関係によるとも考えられる。

バリューネットワークに組み込まれた時点で、視点はそこに縛り付けられる可能性があるので、広い視野を持つことが大事。
また破壊的技術が自社とどのような関わりを持つかは、ある程度想像力を豊かに持つ必要があるのだろう。
(どれくらいのカーナビ業界人が、スマホ流行前にこれが破壊的技術だと予想しただろうか?)

本文中では、掘削機についてもディスクメーカーと同じことが言えると主張されている。
全く違うバリューネットワーク(違う目的)で商品化され、技術の革新に伴い本流を侵食する。技術の革新は、性能の向上、コスト低下、操作性、信頼性の向上などだろう。
顧客が求める需要に達した段階で、顧客の要求は別の段階に移る。形態などは通信の信頼性から、月額料金の安さに評価基準が移っていると言えるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2019年5月29日
読了日 : 2019年5月29日
本棚登録日 : 2019年4月18日

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