彼らは限りなく人に近いがどこまでもケモノである。
がおったーやズーマップなど、インターネットも当たり前に存在する現代がモチーフの世界。そこに住むのは肉食獣や草食獣に鳥類爬虫類、様々な動物。人の理性と獣の本能を併せ持った思春期の少年少女たちは、全寮制の学園で恋に部活にと青春を謳歌し、悲喜こもごもの集団生活を営んでいる。
差別があり偏見がある。上下があり優劣がある。
主人公のレゴシは無口で風変わり、陰気なハイイロオオカミとして孤立し、同じ演劇部員だったアルパカ食殺事件の犯人(?)ではと誤解される。
すれ違い食い違い空回る動物模様がとても面白い。
作中登場するキャラクターはいずれも二足歩行する動物のビジュアルで、萌えを意識した変な媚びは一切ない。その面ではとても読者に対してストイック。「かわいい」と客観的に評されるうさぎのハルでさえまんまうさぎである。
うさぎの血が肉食獣の麻薬扱いされてたり、肉食獣による草食獣の食殺事件が報道されるとイヌ科の生徒の肩身が狭くなったり、私たちがどっぷり馴染んだこの世間にとてもよく似ていながら、物理的にも精神的にも二重に弱肉強食の軛に囚われたシビアな世界の模様が、恋に進路に悩める等身大の学生を主軸におき、学園という箱庭の中ただならぬリアルさを持って描写される。
引っ込み思案でどもりがち、ぱっと見へタレで冴えないが心優しい主人公とイヌ科の仲間、自分の欲望に忠実に生きる多淫で小悪魔なうさぎ、エリート意識が強く学園に君臨する伝説のビースターの称号を狙う先輩など、個性的なキャラクターたちが織り成すスクールライフは吸引力がある。
性欲か食欲か、この恋愛感情はエモノへの食欲がねじくれた副産物でしかないのかという動物のカラダに人の知能と心を持ち得たが故の命題、ケモノであってもケダモノには堕したくないという悪あがきがドラマに深みと厚みをもたせる。
レゴシの前途多難なこれからに目が離せない。
- 感想投稿日 : 2017年8月24日
- 読了日 : 2017年8月24日
- 本棚登録日 : 2017年8月24日
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