バビロンまでは何光年? (ヤングチャンピオン烈コミックス)

著者 :
  • 秋田書店 (2019年9月19日発売)
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本棚登録 : 190
感想 : 13
4

唯一生き残った地球人バブと愉快な仲間たちのドタバタ珍道中を描くSF。宇宙人のナンセンスな造形や生態など、印象はガーディアンオブギャラクシーに近い。ここに育児要素がプラスされる……というか、それまで交流のなかった双子(しかも発達障害持ち)を引き取った新米パパの試行錯誤が笑いを交えて展開される。
TS、ショタ、同性愛、人外など、道満作品ではお馴染みの要素がてんこもり。しょっぱなから主人公が宇宙人の風俗に出かけていくのだが、セックスの仕方が斬新。まさしく人類には早すぎる。
惑星ソラリスやアカシックレコードをもじった造語やケビン・ベーコンゲームといい、B級映画やSFへの愛が随所に散りばめられたマニアックな内容で、わかる人にはわかるけどわからない人は何これツマンねとなりかねない。そういう人はどの道満作品を読んでも合わないと思うので、他をあたったほうがいい。
そして本作では家族愛も重要なテーマとなる。
ナノマシンの影響でしばしば性別が変わる主人公と、そんな主人公と微妙な距離感を保ち続ける双子。
壮大な宇宙をテーマにしながら移動中の宇宙船内で繰り広げられるのは、扱い辛い子供にへどもどする半人前パパと、それに呆れる仲間たちのシットコム。この脱力シュールな落差がいい。
長大すぎる回転寿司やまるごと漫画喫茶の惑星など、彼らが旅する星々はいずれもユニーク。宇宙というマクロな舞台でミクロな冒険を繰り広げるのだが、星新一のSSで育った読者なら、こんな星あったらいいなあと受け入れられる。
デフォルメが利いた絵柄は可愛く、しばしば変態的ともとれるきわどい性を扱っても、ドギツくならずにすんでいる。レズもホモもショタもあらゆる特殊性癖がタブー視されず、同一の世界観の中で混沌と共存する独特のノリがなんだか心地いい。
タイトルの伏線回収など、回想に入ったあたりからオチは読めていたが、最後まで楽しかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月13日
読了日 : 2020年1月13日
本棚登録日 : 2020年1月13日

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