「山に生きる人々」などで知られる、宮本常一氏によって書かれた文章は第一章のみになる。
だがそれ以降も、安渓遊地氏により、宮本氏との関わりで教わったこと、また安渓氏自身がフィールドワークを行う中でぶち当たった「調査されるという迷惑」が記されてある。安渓氏そのひとが投げかけられたり耳にしたりしたことが、おおよそではあるけれどハッキリ書かれて、なるほどこれは迷惑にちがいない、と、フィールドワークの難しさに天を仰ぐ思いになった。
考えるのは、私たち(といっても私もいちおう「地方のひと」ではあるのだが)が読みものとして、またそれを媒介したマンガなり小説なりで受け取った土地の情報を、鵜呑みにしたままにその土地の人びとのことを決めつける危うさだ。
本文にても示されているが、それはイメージを固定して、ほんとうに昔から伝わってある物語/習俗を歪めてしまいかねないし、その人びとの根っこになる部分を引き抜いて空っぽにする、そういう行為とごく地続きではないだろうか。私はそれを危惧する。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年9月24日
- 読了日 : 2022年9月24日
- 本棚登録日 : 2022年8月31日
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