お金って一体何なんだろう。ただの紙切れ、されど、それが価値を持つことにより、巨大な力を持つ。金に、どんな価値をつけるのかは、それぞれだ。心が伴っていて、上手くいく場合もあれば、逆も然り。
彼岸コミューンの考えは、現代の貨幣制度に対する問題提起か?
な〜んて、真面目に書いてみたが、極上のエンタメ小説である。
頁を読む手が止まらなく、読み進めてしまった。登場人物が交差していく見事な配置。金に振り回される人々、振り回す人々、それを追う人々。様々な視点で描かれる世界。
その中の、野々宮という男。島田雅彦は、こういう人を書くのが上手い。完璧なんだけれども、どこか抜けていて。情があるところが、読んでいて惚れてしまう。女刑事も、これまた、彼の作品に出てくるタイプ。この2人のラブストーリーは、終わりが見えているけれど、どちらも希望を信じている、それが辛い。が、私はこういう終わり方は好みだ。野々宮と恩師の下りも切なく、「一言の重み」を知らされる。
全体を通して、文体も他の作品と違い読みやすく、島田氏が面白がって描いている…そんな気もした一冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
2012~2013年読書記録
- 感想投稿日 : 2013年7月15日
- 読了日 : 2013年7月15日
- 本棚登録日 : 2013年7月15日
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