御前会議 (文春文庫 115-11)

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  • 文藝春秋 (1984年8月25日発売)
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感想 : 2
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著者五味川純平の怒りが伝わってくるような労作。戦後になって明らかになった資料を基に、勝つことができない不毛な戦争に突入していった、その端緒を明らかにしている。きっと某かの謀略や独裁者の決定によって、天皇や政府が巻き込まれていったに違いない。そう思っていた著者の目の前に現れた現実は、会議のための会議と、声の大きいものや勇ましい発言するものに引きずり回される、情けない日和見主義の集まりだった。

現実を直視せず、現場の場あたり主義にふり回され、退くことや、留まることができない「御前会議」の様子は、まさしく明治以来つづく官僚主義の最たるもので、最高権限者である天皇を戴く「御前会議」でさえもその為体であった、「大日本帝国」のお粗末が明らかになる。

勇ましい発言をするものたちは、その勇ましさにふり回されて無駄死にする最前線の兵士たちのことを省みもしない。勇ましい口ぶりの勇者は、なぜ最前線で泥にまみれ、死に直面せず、のうのうと戦後を生きながらえるのか。満州でソ連侵攻に直面した著者の憤りは深く重い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戦争
感想投稿日 : 2011年2月3日
読了日 : -
本棚登録日 : 2009年9月25日

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