理論と現実のギャップを埋め合わせるアイデアが現場から創造されている・・・・・・本書の内容はこの一言に尽きると思います。
第一章は企業のお話、「創造的破壊」の考え方に基づく不良債権処理を批判しています。不良債権を処理することで、帳簿上は健全になっても現実には銀行・企業の双方の首を締めることになる。そして、現実にそうなってきたといいます。
そして、現場からこれに対する”新しい解”、企業再生事業の話がでてきます。
第二章はさらに加えて地域と企業・行政のお話、小さな産学協同によって町を救う事例をはじめ、「新しい関係」について一番触れているのはこの章だと思います。たとえば行政は、現場の問題を解決するノウハウは持たない(持ってこなかった)けれど、行政の持つ”ハク”は現場の中小企業を強力に後押しします。新しい関係のなかで新しい役割が見出されているのが分かります。
第三章はそれに加えて市民のお話、そしてまとめの章だと言えるのではないでしょうか。
銀行などの間接金融としての機能、金融の公共性・社会的役割に注目しながら、中小企業の経営者や市民が立ち上がり、行政を変えてゆく。
民主主義があることを実感しつつ、課題もあるといいます。情報に触れる市民側の社会的意識、情報を発信する側の適切で分かりやすい情報発信。
企業と地域の結びつきとは、いうだけなら簡単なことですが、この本では実例が取り上げられているので、そうした希望的な観測が想像の産物ではないことを知らせてくれます。その意味で、希望を持てる一冊、そして分かりやすい一冊(理論的というより説得的な!)だと思います。
- 感想投稿日 : 2013年6月11日
- 読了日 : 2013年6月10日
- 本棚登録日 : 2012年12月8日
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