科挙: 中国の試験地獄 (中公文庫 み 22-18 BIBLIO)

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  • 中央公論新社 (2003年2月25日発売)
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感想 : 17

○中学生にとって四書五経の暗記は当たり前!なんて時代だったら、試験はどうなるのだろうかと思います。西暦は6世紀、隋の文帝によって設けられた科挙制度(”科”目による選”挙”)。本書は科挙がもっとも発展した清朝末期に焦点を当て、その試験地獄の姿を描き出します。

○貴族政治による弊害に対して、天子がその権力を確立し、優れた人材を集めるための科挙制度。文帝の試みは次の唐代に入ってようやく一定の成功を収め、科挙全盛期の時代が始まります……とはウィキペディアでもわかることなのですが、この本が面白いのは、広い視点で科挙制度を軸にした官僚制を検討するだけでなく、細かな視点で科挙制度の厳しさ、はびこる迷信を鮮やかに描き出していることです。

○科挙制度の問題はいくつかありますが、ぼくが印象に残ったのは学校を有名無実にしてしまったということです。学校は科挙試験への踏み台にすぎないからと、学校内の歳試を平気ですっぽかす生徒(生員)。そして、優秀な人材は科挙で集まるからといって教育制度への投資を行わなかった政府。科挙制度を中心にしてきわめて先進的な官僚制を作り上げた中国でしたが、のち清朝に入ると欧米に対して教育での遅れが明らかになります。学校制度の重要性を唱えていたのは、王安石ただ一人だったのでしょうか……。

○ほか、試験中にこれ幸いとばかりに復讐を行う幽霊が現れたり(たとえ呪い殺されても試験中も門は開かれないので、死体は窓から捨てます!)、科挙に合格したころには老人になってしまったという人が年齢を聞かれて「五十年前二十三」と答えたという話があったり、カンニング本や四書五経を書いたカンニングシャツなるものがあったり、もうとにかく何でもアリといった感じでとても面白いです。

○いろいろ書きたいですがまとまらないので再読したいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年10月14日
読了日 : 2013年10月13日
本棚登録日 : 2013年10月13日

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