森家の人びと: 鴎外の末子の眼から

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  • 三一書房 (1998年6月1日発売)
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感想 : 2

◆類さん(自分にとって存在が感じられる人物を呼び捨てるのも気が引ける……)の小説、エッセイといった作品集です。『森家の人びと』という題ではありますが、該当するのはエッセイの一部、それも大部分は『鴎(鷗)外の子供たち』と重なります。から、父親としての鴎外に関心がある方はそちらをお読みになった方がよいと思います。

◆自身の生活に根付いていながら、その苦悩や悲劇まで他人事のように描いてしまう冷静な視点、物事に対する細かな描写(作っているのではなく、覚えているのです!)。なにより、妻とのいさかいや自身の弱みといった全てを書きだしてしまうという一貫した姿勢にはただならぬこだわりを感じました。

◆そこには、老いた愛犬に対して生を願う気持ちと死を願う気持ちがあったり、妻に対して愛情と同時に”身の回りのことをなんでもしてくれる便利な神”みたいな気持ちもある。どうしてそこまで描こうとするのか。

◆おすすめはたくさんありますが、やはり「硝子の水槽の中の茉莉」は、美しいです。ともに歳を経た姉に対して抱く苛立ちが描かれていながら、それは愛情でもあるのだと教えてくれます。そして、生涯を通して自身の美(贅沢)を貫き、最期にそれを弟に託す茉莉さんの姿が浮かびます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年3月11日
読了日 : 2015年3月3日
本棚登録日 : 2015年3月3日

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