温かなお皿 (メルヘン共和国シリーズ)

著者 :
  • 理論社 (1993年6月1日発売)
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本棚登録 : 736
感想 : 82
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食事、もしくは食べ物が登場する短編たち。
90年代前半のドラマの再放送を観てるみたいだなと思いながら読んだ。巻末を見ると、初出は1991年とのこと。自分の嗅覚に間違いはなかった。
スマホどころか携帯電話すら珍しい描写から90年代前半の匂いを嗅ぎとったわけではない。
話に登場するひとたちの口調、仕草、行動、そういうものの一つひとつがどうしようもなく、90年代前半だったのだ。

幼かった自分は、90年代前半の生活をリアルに覚えてはいない。自分が知っている当時の時代は全部ドラマの再放送による追体験に過ぎない。なんとなく大げさで、今よりも感情的。みんなが同じテレビを観て、同じCDを買っていた時代。

1991年がもうすぐ30年前になるということに驚いてしまう。文化は変わり続ける。ずっと変わらない生活もある。
きっと今から30年後のひとが2020年のテレビドラマを観たら、古臭さを感じたり、ノスタルジックな気分になるんだろう。でも、そのひとだって食事はするはずだ。1991年、2020年、2050年、どの時代のひとだって食事をして生活をする。
「アイスクリーム」という声がメリークリスマスに聞こえることは何十年後もあるはず。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 江國香織
感想投稿日 : 2020年11月5日
読了日 : 2020年11月3日
本棚登録日 : 2020年11月3日

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